札幌地方裁判所室蘭支部 昭和40年(ヨ)73号 決定 1965年12月09日
申請人 穂別炭鉱労働組合
被申請人 穂別炭礦株式会社
主文
一、被申請会社はその穂別炭礦事業場の閉鎖の可否及び閉鎖に伴なう申請組合の組合員の処遇に関し、申請組合と信義に従い誠実に団体交渉を行なわなければならない。
二、被申請会社は、右団体交渉期間中右事業場閉鎖のための坑内への電源切断、扇風機の操業停止、坑内諸施設及び資材の坑外搬出と撤去等の行為をしてはならない。
(注、無保証)
(裁判官 奥村長生 梅田晴亮 町田顯)
仮処分命令申請
申請の趣旨
一、被申請人会社は申請人組合と信義、誠実にもとずく団体交渉を行わないで被申請人会社穂別炭礦事業場の閉鎖を行つてはならない。
二、被申請人会社は、穂別炭砿事業場閉鎖の手段として坑内えの電源の切断、扇風機の操業停止、坑内諸施設及び資材の坑外搬出、撤去、その他閉山の準備行為をしてはならず、又被申請人の従業員を閉山を理由に解雇してはならない。
との裁判を求める。
申請の理由
一、被申請人穂別炭砿株式会社(以下単に会社という)は本店を勇払郡穂別町におき、同町に事業所を有し、石炭の採掘販売を業としているものである。
申請人穂別炭鉱労働組合(以下単に組合という)は、会社の従業員を以つて組織する労働組合であつて現在その組合員数は一四〇名で、日本炭鉱労働組合(通称炭労)に加盟しているものである。
尚会社はその鉱区を申請外北海道炭礦汽船株式会社から借り受け、採掘しているものであるが、その採掘した石炭のすべては北炭に納入している。
二、組合と会社との間には、労働協約(以下単に協約という)がありこれは現に効力を有し存続中である。
同協約は昭和三十四年十一月一日付で締結されたもので、その有効期間は、同年十月一日から一年間である(九〇条)がその後毎年延長され、現在は昭和四十年十月三十日の協定に基き、昭和四十一年十月三十日まで有効期限が延長されている。
三、右協約第五条には「会社は事業場閉鎖、長期休業、分割、操業短縮、機構改正その他企業整備については、組合と協議の上行う」と規定されている。
四、ところが、会社は昭和四十年十一月二十二日組合に対し突然「同月三十日付を以つて事業所を閉鎖する、坑内諸施設、資材は十二月一杯に坑外に撤去接収する、右はすでに会社の決定事項である」旨の通告がなされた。
しかし右のような事業場閉鎖を行うには、前記労働協約第五条に従い、あらかじめ組合と協議しなければならない。しかるに閉山は組合にしてみれば寝耳に水の申入れであり、この問題については労使間においてなんらの協議もなされていない。
五、組合は会社を相手に閉山問題について会社が組合と協議しなければならない義務の存在確認を求める本案訴訟を提起するよう準備中である。
しかるに会社は前項記載のとおり、協議の義務を尽くすことなく、会社の決定だとして十一月一日を以つてその従業員全員を解雇したりと称し、一方的に閉山を強行しようとしている。
組合は会社の違法な閉山強行によつて蒙る差し迫つた回復すべからざる損害を避けるため、本仮処分命令を申請する。